「陳述書」とは何か?
以前、「反対尋問を経ない陳述書の証明力について」という文章を書きました。
その中では、次のように書いています。
裁判所の民事訴訟では、「陳述書」を多用します。この陳述書、どういう位置づけかというと、訴訟での法律上の「主張」を裏付ける「証拠」です。要するに、証明したい事柄を記した書面ではなく、証明したい事柄を証明するための材料そのものです。
以下、岡口基一『民事訴訟マニュアル(第2版)』を参考にします。
陳述書の機能は、次のようにまとめられます。
- 主尋問代替・補完機能
- 事前の証拠・事案開示機能
- 反対尋問準備機能
- 争点整理機能
陳述書は、一般の民事訴訟において頻繁に利用されるものですし、離婚訴訟のような人事訴訟においてもそれは変わりません。
裁判官は、尋問において、陳述書の記載内容が供述者本人から具体的に迫真性をもって供述されるか、陳述書と主尋問の内容が反対尋問を受けても破られないかを注視しています。
弁護士に事件を委任しているとしても、陳述書の作成者は、陳述書の内容を経験した本人です。そこは、訴状や準備書面とは大きく異なりますね。上でも書きましたが、訴状や準備書面は「主張」を提示するものであり、陳述書は「証拠」にあたるからです。
離婚訴訟において陳述書が重要な理由
一般的な民事訴訟でも陳述書は重要
一般的な民事訴訟においてもそうなのですが、離婚訴訟においても、本人尋問・証人尋問の前に陳述書を提出します。
陳述書には、争点に関わることや、当事者間での出来事を端的に示しますので、裁判官はそれを読んで事案の目星をつけるわけです。陳述書を提出する段階では、裁判官は、訴訟当事者と会ったこともないという場合も多いのですが、それでも訴状・答弁書・準備書面に加えて当事者らが作成した陳述書をもとに事案を推し量ります。
ですから、一般的な民事訴訟においても、陳述書は重要です。
離婚訴訟においては特に重要になる場合が多い
一般的な民事訴訟は、たとえば、契約トラブルであれば契約書などが存在することが多いですし、交通事故であれば実況見分調書や医師の診断書などが存在することが多いです。裁判所が最初に重視する紙の証拠(書証)が存在することが多いといえます。
しかし、離婚訴訟では、それに相当するものが存在することが珍しいです。何らかの写真、メール、日記といったものがある場合もありますが、それだけで証明のレベルに至るかどうかはモノ次第です。また、証拠そのものだけでは証明できず、補足説明を要する場合も多いといえます。
そのため、離婚訴訟においては、陳述書がいかに説得的かがポイントになりやすく、重要になりやすいといえます。
離婚訴訟の陳述書で気をつけるべきこと
しかし、陳述書に力を入れると言っても、「言いたいこと」「知ってほしいこと」を書きまくるのは、無意味どころか逆効果になる場合があります。
争点や、争点を判断するにあたって重要なことに絞って書くことが望ましいといえます。
そのため、陳述書は、弁護士と打ち合わせて構成していくことが望ましいといえます。自分のことになるとなかなか冷静にできないということもありますし、弁護士は裁判官に伝わりやすい構成の仕方を身につけている(場合が多い)からです。
逆に、いくら弁護士に信用を置いておられても、陳述書を完全に弁護士任せにしていると、尋問で「作成者」である本人が書いたはずの内容を話せないという事態が生じるおそれがあります。そんなことが起きてからでは、なかなか取り返しがつきません。
金沢法律事務所 弁護士 山岸陽平