「ケース研究」327号

「ケース研究」

公益財団法人日本調停協会連合会が発行している「ケース研究」という雑誌があります。家庭裁判所で取り扱う事件類型に関し、実務の参考になる記事・論文が載っている雑誌です。

私は、以前から気になっていたのですが、事務所を設立したのをきっかけに購読しています。

家事事件を取り扱う以上、勉強を重ねたい

司法試験の勉強では、家事事件の占める割合は大きくありません。しかし、弁護士として実務をし始めて、市井の人たちが抱えている問題の多くが家事事件であることを知りました。

私も、弁護士として、いろいろな家事事件を取り扱って、いろいろな「家族」を知りました。でも、多種多様な生き方や人間同士の関わり方があるなかで、知らないこと・わからないことがまだまだ多いです。

それに、そもそも、法律・制度を勉強しても、「人と人との関わり方」「人の生き方」「人の多様な心理」についての知識が幅広く身についているとはいえません。

家事事件で、さらに難しいのは、子どもという存在が関わってくるところです。

その上で、依頼者に対する忠実義務を守ることが大原則であることも忘れてはなりません。

今思うのは、家事事件を取り扱う以上は、知見を深め、勉強を続けなければならない、ということです。気を抜けば、個別ケースにおいて、それまでの自分の知識や経験に基づいた「決めつけ」をしてしまいがちであるところ、「一つだけの正解がある」と思わないように努めて、勉強を重ねたいと思います。

家事調停における「子の意思の把握と考慮」

「ケース研究」327号(2016年10月発行)のなかで、着目した記事は、家裁調査官による「家事調停における『子の意思の把握と考慮』~家裁調査官の立場から~」と高松家事調停協会による「夫婦関係調整事件における面会交流~家事事件手続法のもとでの調停運営~」です。

まず、家事調停における『子の意思の把握と考慮』~家裁調査官の立場から~」を読んでの感想です。

「子の意思」の把握をする場合の家裁調査官の面接技法・心がけや、調停委員と調査官の連携について書かれています。

子の年齢にもよりますが、弁護士は、夫婦関係事件に際して、直接的に子どもに対して、「子の意思」を確認しに行くということは多くないのではないかと思います。少なくとも私はそうです。

私は、子の監護者側の代理人を務める場合も、非監護者側の代理人を務める場合もありますが、依頼者の捉える「子ども像」をお伺いしてそれを前提に進めていくという形になりやすいといえます。

それに対し、家裁調査官は、双方当事者の主張を踏まえ、「子の意思」を把握します。

弁護士と家裁調査官では、子供との関わり方が全く異なるわけです。

私は、家事事件を取り扱う中で、家裁調査官の調査報告書を読む機会は多く、家裁調査官の調査に立ち会ったこともあります。ただ、日々子どもに接している家裁調査官と比べると、経験十分とはいえないかもしれません。家裁調査官がどのような面接技法を用いて子どもに接しておられるかを理解し、調査をいかに紛争解決に役立てるかということをよく考えながら、調停・審判に臨むようにしたいと思います。

夫婦関係調整事件における面会交流

高松家事調停協会による「夫婦関係調整事件における面会交流~家事事件手続法のもとでの調停運営~」は、家裁における研究会を収録したものです。

「子の意思の把握・考慮について」、「夫婦関係調整調停係属中の面会交流について」、「期日間に発生したトラブルにどう対応すべきか」、「複数の争点がある場合の優先順位について」、「評議のあり方」、「当事者が主体的に調停に関わるための方策について」というテーマを挙げて検討しておられます。

 いずれも、面会交流が関係する夫婦関係調整調停(離婚調停)において、問題になることが多く、弁護士も悩むことの多い事柄です。

監護親、非監護親どちらの側においても悩みはあります。弁護士は、依頼者、子どもにとって良い解決、そして相手方にも配慮した解決を目指すべきです。そうはいっても、弁護士が関与する案件は、事案によりますが、簡単に行かないことが多いです。

家事事件、特に子どもが関係するものを取り扱う以上、法律知識や裁判所の運用だけではなく、多様な勉強を重ね、思索を深めていきたいと思います。